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国内外でのフィールドワークを中心に、実験室での顕微鏡・DNAレベルでの解析、植物園施設を利用した栽培実験も含め、総合的な見地から植物の多様性を研究している。自然環境にある実物から植物の不思議・面白さを発見し、解明する楽しみを味わうことができる研究分野である。特に、被子植物の花や葉の多様性が、どのような適応的背景のもとに形作られてきたのかを、送粉者や植食者との関係に着目して解析している。日頃何気なく見ていた花や葉を、他の生物との関わりを通して見ることで、思いもよらない植物の姿に出会うことがある。これまで気づかれることのなかった植物の姿を明らかにしていきたい。
また、日本列島から台湾・中国大陸・ヒマラヤ地域にかけての日華植物区系区を中心に多様化した植物群に着目した系統分類学的研究を行っている。このうち日本列島周辺に分布する種や種群については、地理的分化・染色体倍数化・二次的交雑などについてアプローチし、日本列島の多様な植物相が形成された進化プロセスの解明も目指している。
さらに、小石川本園では生物多様性保全の一環として、小笠原諸島固有の絶滅危惧植物を中心にした保護増殖事業を行っているが、これに関連した植物群の系統分類学的、集団遺伝学的な研究を行い、効果的な保全・保護の方策の確立も目指している。
なお、東京大学植物標本室(Herbarium TI)は、合計190万点以上の葉標本を所蔵する日本で最も大きな植物標本室であるが、そのうち、シダ類・裸子植物・合弁花類の標本約80万点を小石川本園で維持管理しており(単子葉植物・離弁花類は大学博物館所蔵)、国内外の研究活動に活用している。
植物は無機栄養、光、水、物理的なストレスなど環境条件の変化に対して、器官の形態や比率などを変化させる。 こうした可塑性が適応的にどのような意義を持っているのか、そしてそれを制御しているホルモンなどの作用はどのように統合されているのかを、数理モデルと実験から探る。
熱帯から暖温帯にかけては常緑広葉樹が分布し、冷温帯からタイガに至る寒冷地には主に常緑針葉樹が分布する。 こうした分布域の違いを説明するために、水分生理学の立場から解析を進めている。
生態系の中では窒素を巡る競争が常に起きている。 この競争を取り込んだ生態系モデルを使うと、遷移、二酸化炭素の上昇に伴う生態系の変化などについてテスト可能な予測をすることが可能である。 現在、モデルをさらに発展させるとともに予測の実験的なテストを開始している。
草本植物は形態の可塑性が大きいが、その変化が、光などの資源獲得にどのように貢献しているか、また個体の力学的安定性などの性質をどのように犠牲にしているか、を明らかにし、競争下にある個体の資源獲得戦略を明らかにすることを目指している。
植物園の3研究室は、東京大学理学系研究科・生物科学専攻の協力講座(生物生命科学)となっています。 各研究室での大学院(修士・博士)進学は、生物科学専攻での入試を通してとなります。 大学院入試についての詳細は、生物科学専攻に問い合わせるか、こちらのホームページをご覧下さい。